化学の勉強法のヒント
化学は暗記だけの科目ではありません。参考書は複数、問題集は一冊を使う!
化学が苦手な高校生だけでなく、化学が得意な高校生にも参考になります。
- 著者
- 札幌市内の中高一貫校(北嶺)出身のK家庭教師(講師)。現在、北海道大学医学部医学科に在籍中。やさしく丁寧な指導に定評があり、多くの教科に対応できる家庭教師です。
シニアの教室で中高一貫校生、高校生を指導。 - 内容
- 化学は暗記だけの科目ではありません。参考書は複数、問題集は一冊を使う!化学が苦手な高校生だけでなく、化学が得意な高校生にも参考になります。
はじめに
はじめまして、北海道大学医学部医学科のKです。みなさんは化学に対してどんなイメージを持っていますか?「覚えることがとても多くて大変・・・。」「化学反応式なんて多すぎてわからない!」「molだとか知らない言葉があまりにたくさん使われすぎていて理解できない!」こんなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。むしろ、「化学なんて楽勝だぜ!」なんて人は結構少ないんじゃないかなって思います。というわけで、これからみなさんに化学の勉強をするうえでちょっとしたヒントになってもらえるように、僕が大学入試を通して思ってことや勉強法のコツについてお話しさせていただきたいと思います。化学が全く分からない人も化学の得意な人も参考にしてもらえるように書きますので、ぜひ自分の勉強法の参考にしてみてください。ですが、僕がどんな人なのかも知らないままに話をされても参考にしにくいかな、と思うので少しだけ自分の話をしてから化学の勉強法についての話を始めようかなと思います。
冒頭で述べましたように、僕は北海道大学の医学部医学科で学生をしています。高校時代は理系科目が好きで、高校2年生くらいまでは大学で量子力学や有機化学を専攻するのも楽しそうだなと考えていましたが紆余曲折があり、今は医学の勉強をしています。僕は暗記することが苦手なので医学の勉強には多少苦労していますが、実は高校化学の勉強で苦労したことはほとんどありませんでした。それは、僕にとっての高校化学は理解するものであり、ただただ暗記するということをあまりしなかったからではないかと思います(もちろん、色や名前など暗記しなくてはどうしようもないこともあります)。
では、どのような分野は暗記をしてどのような分野は理解していくだけでいいのか?また、どのように勉強していけば理解につながり成績も伸びていくのか?そんな疑問になるべく答えることができるように僕の思う化学の勉強法について書いていきたいと思いますので、少しでも参考にしてくだされば幸いです。
1.理論化学ではイメージをつかもう!
理論化学分野の勉強ではイメージをきちんと作り、そのイメージを基にいろいろなことを説明していけるようになることが大事です。理論化学ではたくさんの式が出てきて、それを動かしていくことに嫌悪感を抱く人も多いのではないかと思いますが、頭の中で1度イメージさえできてしまえば、そのイメージに数字を当てはめていけばいいだけなので簡単に扱えるようになるのではないかと思います。では、そのイメージを作るためにはなにが大切かというとそれは分子の動きと力関係についての理解だと思います。ここから、少しどのような理解をしていけばいいのかを具体的に説明してみますが化学の苦手な方も頑張って少しついてきてください。ここの部分については別箇で図も用意したのでそれも参考にしてみてください。
物質の状態には、気相・液相・固相の三相がありそれぞれ分子の挙動が違います。これらは分子と分子の間に働く力の種類(ファンデルワールス力、クーロン力、水素結合、共有結合、自由電子による共有結合・・etc)やその強さと、分子自体の運動エネルギーの関係によって決まります。分子の運動エネルギーは温度に比例するわけですから、温度が上がれば上がるほど分子間に働く力を上回って分子の動きが自由になり液相、固相へと変化していくわけです。また、分子同士が近くなれば近くなるほどに力は大きく働きます。だから、分子同士の距離が近くなるような結晶構造をとれるような分子は同じ力しか働いていなくても高い融点を示すわけで、高い圧力をかけてあげると気層から液相、固相への状態変化がおきます。また、反応熱なども同じ結合している力を考えてあげればわかりやすいのではないかと思います。
このような力の関係は電気陰性度などを説明するときにも用いることができます。周期表の右上に行けばいくほど電気陰性度(念のために説明しておくと、電気陰性度とは原子核が結合電子対をひきつける力の大きさのことを言います)が大きくなるのは、周期表の上の部分のほうが原子核と電子の最外殻にある結合電子対との距離が近くなり、右側に行けばいくほど原子核の陽子数が増えるためより大きな力がかかるためです。ただし、希ガスはオクテットというほかの原子とは異なった非常に安定した状態にあるので例外となりますが、この理由に関しては高校レベルにおいては特に理解しておく必要がないのではないかと思います。
このように、分子の動きや働いている力を考えることで大体のことは説明することができます。こうして一つ一つに対して暗記ではなく説明できるような状態で頭に入れていくことが化学の勉強では大事なのではないかと思います。しかし、自分一人の頭で考えて納得のいくような説明ができるわけはありません。この勉強法を進めていくためには、教科書よりもある程度まで詳しく載っている「化学の新研究(三省堂 著 卜部善庸)」などの参考書を使ったらいいのではないかと思います。しかし、大事なのは新しい事柄や事実に触れた時にすぐに参考書の説明を読まない、ということなのではないかと思います。自分の頭でどうしてなのかを考え、それでだめなら参考書で確認する。このトレーニングが化学的に考える力を身に着けさせてくれるのではないでしょうか。
2.参考書は複数、問題集は1冊を使おう!
これは特に理論化学分野で言えることではないかと思いますが、参考書は複数使うことが大事なのではかと思います。どんな参考書を読んでも、すべての分野の説明が自分にとってわかりやすいなんてことはありません。また、自分がどの程度まで理解ができているかによっても詳しすぎたり易しすぎたりと違いがあります。なので、1冊の参考書を読んでいまいちだと感じたら別の参考書を読んでみることをお勧めします。なにも何冊も参考書を買う必要はありません。ある分野でわかりにくかったり行き詰ったりした時に本屋さんや図書館でその分野だけ何冊も立ち読みしてみるくらいでいいのです。最近だとインターネットで調べてみることもおすすめです。必ずしも正しくはなく注意は必要ですが(これは参考書も同様です)、非常に噛み砕いた説明や覚えやすい語呂合わせが載っていることも多いです。
しかし、問題集はというと同じ問題集を何度も繰り返しといたほうがよいのではないかと思います。これはどんな教科でも言えることではあるのですが、1回解いて解説を見ただけではまず身につきません。最低でも2回は、間違った問題に関していえば3回は解く必要があるのではないかと思います。また、同じ問題集を何度も解くことは自信にもつながります。「この問題集に載っていることは完璧に覚えた!」こういう自信をもっていることも本番では大切になってくるのではないでしょうか。問題集も自分に合ったものを使えばいいとは思いますが、僕は学校で使っていた「ハイパー化学」という問題集しか使っていませんでした。問題数は結構少なく難易度も高くはないですが良問ぞろいではないかと思います。
3.無機ノートを作ろう!
「無機化学は覚えることが多くて嫌い!」なんて人は多いんじゃないかと思います。しかし、逆に言ってしまえば覚えてさえしまえば点の取りやすい分野でもありますので頑張って覚えてください。ここでも、覚えずに理解だけでいけたらとても楽なのでしょうが、残念ながら無機化学はそうはいきません。そこで、無機ノートを作ってみることをお勧めします。
作成例は別箇に掲載しましたが、元素ごとに項目を作り、ノートを2分割した左半分に原子の性質を、右半分にそれに関連した化学式を書いていくと覚えやすいのではないでしょうか。この時に大事なのが化学式自体を丸暗記はしないことです。化学式を一つ一つ暗記しようとすると膨大な量になってしまいとてもじゃありませんが覚えきれません。先ほど左側に書いたその原子の性質がその反応の理由なのですから、きちんとそれを理解してさえいれば反応物として何ができるかは覚える必要はありません。係数の複雑なものも酸化還元を考えてあげれば大体のものは覚えずに済むはずです。
ただ、沈殿を起こすか起こさないか、またその色が何であるかについてはただの暗記で済ますほかにありません。ここについては語呂合わせを使うことをお勧めします。インターネットで調べてみたり、無機化学の参考書を見たりすれば大体のものが書いてあるはずなのでそれを参考にして覚えてみてください。
4.有機化学はまず反応経路図をおさえよう!
有機化学では、とても多くの物質が出てきます。しかし、無機化学の時と違い一つ一つ覚えていく必要はありません。大事なのは、どの物質(や官能基)に何をしたら何ができるかです。これが一つにまとまったものが教科書の後ろなどによくついている反応経路図です。これがしっかりわかるようになるとどんな有機化学の難問もパズルゲームに変わります。
東大や京大、またそのほかの難関大と呼ばれるところで出てくるような問題であっても反応経路図にのっているような「何をどうしたら何ができる」というルールに従ったパズルになります。東大や京大の問題で出てくる問題で一番簡単なのは有機化学だ、といわれるのもこのためです。
有機化学は得意になるとどんな問題でも解けるようになりますし、本当にパズルを解くような感覚で解けるので非常に楽しいです。まずは反応経路図が理解しながらしっかりと書けるように取り組んでみてください。
おわりに
今まで本当に簡単にですが、僕の思う化学の勉強法について書かせていただきました。もちろんこのような内容で、化学に対する意識が大きく変わってもらえるとは思っていませんが少なくとも「化学って暗記するだけではないんだな」と思っていただければ幸いです。きちんと勉強していけば化学はいくらでも面白くなる科目だと思います。ぜひ、暗記で終わらせずに化学に取り組んで得意教科にしていただけたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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