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成績UPのヒント 数学

数学学習上のヒント
数学対策について、実践的な内容がちりばめられており、難関大学の数学対策にはとても参考になる内容です。
特に、検算の大切さ、難問が出題された場合の対処法は必読です。おすすめの参考書も記載があります。

著者
北嶺高校1年生の時から高校3年生の2月までシニアの家庭教師で指導させていただいた、現在、東京大学3年生のM君。思いやりのある好青年。
内容
数学対策について、実践的な内容がちりばめられており、難関大学の数学対策にはとても参考になる内容です。特に、検算の大切さ、難問が出題された場合の対処法は必読です。おすすめの参考書も記載があります。

はじめに

初めまして!東京大学理科1類に一浪して合格して、来年度から工学部の4年生になるMです。

東大、というと、天才みたいな人ばっかりなんじゃないか?努力しなくても勉強ができるような人ばかりなんじゃないか?と思う人も多いかもしれないけれど、受験生時代の話を聞いてみると、やっぱりうまくいかない時期があって、悩んで、それでもうまく解決策を自力で、あるいは先生や友達と見つけ出して、そして努力して、やっとのことで合格を手にした人が多いんだな、と感じます。(中には、一回授業を聞いただけで内容がほとんどすべて頭に入ってしまうような天才さんもいることにはいますよ!)

そうはいっても、数学ってどうしても才能とか、そういうものに左右されるんじゃない?と考える人もいるでしょう。確かに、数学で満点を取るということになってくると、生まれついた才能の部分も大きく影響してくるでしょう。ですが、あくまでも大学合格のために必要な点数を取ろう、と思っているだけなら、十分に努力と勉強法の改善でカバーできる学問です。なぜなら、皆さんが正しい勉強法で十分に学習し、数学力を身につけたうえでもわからない問題は、ほとんどの人がわからないからです。(ここで言う、「わかる」とは、完答できる、という意味ではなく、問題に対して自分なりの方針が立てられる、ということを指します。たとえ答えにたどり着けなくても、回りくどいやり方でも、方針が立てられることは採点者に大きく評価されるポイントとなります。)あとは、わかった問題についてできるだけ正しく計算を行うようにすれば、自然と合格は見えてきます。みんなが解ける問題だけ丁寧に計算を行えば合格できる、と考えれば‥ね、簡単そうでしょ?

以下、効率よく数学力を身に着けるためのヒントを書いていこうと思いますので、少し長くなりますがお付き合いいただけたらと思います

数学全体に言えること

ところで、数学の難しいところはどんなところか、と尋ねられた時、あなたはどう答えるでしょうか?多くの人は、「問題を解くのに必要な発想が難しすぎて思いつかない/時間が足りないところ」、「計算ミスをなかなか防げないところ」と答えるのではないでしょうか。    

かく言う私も、受験生時代はこの二つの難題に常に悩まされていたうちの1人でした。当時、「計算ミスがなかなか減らなくて‥」と高校の頃の数学の先生に相談したところ、「さらに計算スピードを上げて、見直しに十分な時間をかけられるようにすると良いのではないか」という回答をいただいた記憶があります。なるほど!と思い、学校で配布された問題集に載っていた計算問題(ある程度複雑な四則演算や微分積分問題、三角関数の問題など)を継続的にこなす習慣をつけるようにしたところ、全体的に、計算ミスの個数は減り、計算にかかる時間も減った印象がありました。ですがそれでも、模擬試験での数学の点数はなかなか安定せず、不安を拭いきれませんでした。

そこで、改めて模試や定期試験でどのような計算ミスをしているのかをよく見なおしてみると、特に、三角関数の計算、積分計算、分数計算でのミスが目立っていること、また、解答の後半に比べ、前半のミスが多いことに気づいたのです。そこで、次回の試験から、「1つの計算(式変形)ごとに一度見直しを行うこと(最後にまとめて検算を行うと、前半の見直しがおろそかになる可能性があったため)」、「特に三角関数、積分、分数計算は少し時間をかけて検算・逆算を行うこと」を徹底するようにしました。こんなに頻繁に見直しをしていると時間が足りなくなるのでは? と思うかもしれませんが、実際にやってみると、意外と検算は短時間で済むことに気づくでしょう。(だまされたと思ってやってみてください!)この習慣をつけてから、計算ミスによる点数のアップダウンは格段に少なくなりました。

現在、私は、アルバイトで模擬試験の添削を行っていますが、全体的に、積分計算にミスが集中している印象を受けます。また、前半で計算ミスを犯してしまっているものは、後半部の点数も付けることができなくなってしまい、たとえ正しく考えられていても、どうしても減点が大きくなってしまいます。日ごろから計算の訓練を積んでおくのはもちろんのことですが、よく計算ミスをしている部分を見つけ、「自分はこの部分でミスしやすいんだ!」と意識しながらこまめに検算を行うことが、計算ミスを減らす一番の近道と思います。

次に、「よい解法が思いつかず、時間が足りなくなる」という問題について、少しお話しします。このような問題が生じる原因として、

  1. そもそもの基礎力が足りていない
  2. 難易度の高い問題に時間をかけすぎている
  3. 基礎力はしっかりしているが、一部の分野でしっかりと身についていない部分がある

ことが考えられます。(もちろん、これ以外の原因も考えられますが、少なくとも上記の問題を乗り越えれば、得点は安定してくるのではないか、と思います。)

1. そもそもの基礎力が足りていない

まず、1.についてですが、こればかりは基礎をしっかりとやらないことにはどうしようもないです‥。どのようにして基礎を固めるか、ということについては、人それぞれ個人差があるところなので何が正しいとは言い切れませんが、一般には青チャートが良いといわれています。私自身も、現役時代、浪人時代と非常にお世話になりました。各分野のエッセンスが例題としてコンパクトにまとめられており、基本例題と重要例題を一通り解くだけでも十分に力がつくような構成になっているのが良いところと思います。(青チャートのすべての問題を完ぺきにこなせば、おそらくほとんどの問題に対応できる力がつくと思いますが、私はそこまでの時間(と意欲)がなく、例題を解くにとどめました。それでも、基礎力は十分についたと思います。)もし、どのような問題集をやったらよいか迷っていたら、とりあえず青チャートをこなしてみることをお勧めします。(見た目はなかなか手ごわそうですけど、集中的にやれば何とかこなせるはずです!)

2. 難易度の高い問題に時間をかけすぎている

次に2.についてです。この例では、よく言われる、「満点封じ」のような、生徒に解かせるつもりがない難問(奇問)に時間を取られてしまい、ほかの簡単な問題に手が回らないケースが考えられます。それ以外にも、幾何や整数分野の問題でも、その性質上、発想力を要する難問が多く出題される傾向にあります。そんな時は、わからない問題を飛ばして後回しにする勇気も必要です。「当たり前じゃん!」と思われるかもしれませんが、これが意外と難しいもので、当時の私は、飛ばした問題が気になって次の問題に集中できない!!ということがしばしばありました。しかし、浪人して多くの問題や試験・演習をこなしていくと、「解けないものは解けないんだ」ということを痛感しました。それから、10分経っても解き方が思いつかない問題は答えを見ることにきめたところ、普段の勉強もスムーズに進むようになり、試験でも、効率よく問題を解けるようになりました。あまりうまくいかなかった試験でも、後で見直してみると、「この問題を落ち着いて考えられていたら、絶対解けていたのに!」というものの点数を足し合わせてみると、意外と高得点になる場合が多いと思います。しかし、難問かそうでないかを見分けるには、十分な基礎力と、経験が必要になってきます。(問題文が長いから難しそう、などと考えるのはいけません!)なので、普段からできるだけ多くの模試を受け、問題集や過去問などで、時間を計りながら問題数をこなすよう心がけておきましょう。(特に、整数問題などでは、大学が好んで出す形式の問題などもあるため、過去問はしっかりと勉強しておくことをお勧めします。)

3. 基礎力はしっかりしているが、一部の分野でしっかりと身についていない部分がある

最後に3.について、この例が一番、解決が難しいと思います。答えを見ても、内容は理解できるのに、いざやってみると解けない、という時は、この可能性を疑ってみましょう。現役時代、私は、この問題をうまく乗り越えることができず、志望校に合格することができませんでした。しかし、浪人時代に、予備校の先生の丁寧な指導のおかげもあり、何とか弱点を見つけ出し克服することができました。この部分については、以下数学1A、数学2B、数学3Cについてそれぞれ述べる中で詳しく触れられたらと思います。

数学学習のチェックポイント

本章では、数学1A、2B、3Cに分けて話を進めていこうと思います。

数学1A

まず、数学1Aについて、この中でぜひ再確認してほしい分野は、三角比、確率(場合の数)、図形問題の3つです。意外とうろ覚えのところが多く、気づかぬうちに失点してしまっている分野かと思います。たとえば、「三角形の内心、外心、重心、垂心について詳しく説明してみて」と言われたとき、すぐに正しく答えられますか?sinθ、cosθ、tanθの、θ=π/3、π/6の時の値をすぐに頭に思い浮かべられますか?sin(90°-θ)=cosθと言われてすぐに納得できますか?(納得できない人は、単位円を書いて考えてみてくださいね!)と聞かれて、一瞬あれ?となった人は多いのではないでしょうか?これらを完ぺきにマスターしていないと、模試や入試でこれらの合わせ技で解かなければならない問題が出たときに、計算ミスやタイムロスを起こしてしまいますね。確率の部分はもっと厄介で、漠然とした知識で臨むと見当違いな方針を立ててしまい部分点ももらえないというケースもあり得ます。ある中学入試の算数の問題で、「全く同じさいころが2つあって、2つとも、1,2,3の目に赤が、4,5の目に青が、6の目に黄色が塗られています。2つのさいころを同時に振ったとき、何色の目が出る確率が最も高いでしょうか?(黄、青)というような形で答えなさい」という問題が出ました。(うろ覚えなので、少し違っているかもしれませんが、大体こんな感じです。)少し時間をかけて考えてみてください。もし答えが(赤、赤)となった人は要注意です!!(ちなみに、答えは(赤、青)((青、赤)も同じ)となります。2つのさいころを区別して考えるのがポイントです)この問題には、確率の重要な考え方が詰まっているので、ぜひしっかりと理解しておいてくださいね。(しかし、中学入試でもこんな難しい問題を出すんですねぇ‥)

数学2B

次に、数学2Bについて、この中では、ベクトル、数列、三角関数、微積分、軌跡と方程式 の分野を中心に確認しておくとよいでしょう。ほとんど全部じゃないか!と言われそうですが、この辺りは本当に勘違いやうろ覚えの多いところです。まずはベクトルについて、「点Aと点Bを2:3に内分する点をCとするとき、ベクトルOCを、ベクトルOAとベクトルOBで表しましょう」とか、「直線のパラメタ表示について説明してください」、「点A(1,3,2)を通り、ベクトル(3,5,6)に垂直な平面の方程式を求めてください」、「ベクトルa,bが張る三角形の面積を求めてください」、「一次独立とはどういうことか」と言われたとき、正しく答えられるでしょうか。これらは、公式として暗記してしまってもよいものですが、「どうしてそうなるのか、どうやって導かれたのか」も合わせて理解してほしいところでもあります。1つ目の質問では、OC=OA+(2/5)AB=OA+(2/5)(OB-OA)=(3/5)OA+(2/5)OB、というように、導く過程を大切にしてほしいと思います。このようにして、暗記したものにさらに理論的な確認作業を行えば、ミスは格段に少なくなります。数列については、2,3項間漸化式や等比数列の和の公式でミスや勘違いが多いようです。これらも、公式の暗記ではなく、どうしてそうなるのか、と意識すればミスは減らせるはずです。また、「an+1=2an+3n+1によって定められる数列の一般項を求めよ」という問題も、思いつかない人は多いのではないでしょうか。両辺を3n+1で割って、bn=an/3nとおいてからbnについての漸化式を解く、というパターン化した問題です。これも必ず覚えておきましょう。また、2項定理も見直しておくとよいかもしれません。三角関数では、2倍角、3倍角の公式、半角の公式、加法定理、tan2θをcos2θで表す公式、すべて正確に言えますか?和積や積和の公式を正しく導けますか?というところでしょうか。微分は、定義をきちんと覚えているか、(極限の式から導けますか?)、を確認しておきましょう。語呂合わせで覚えるのも有効です。(たとえば、sin3θ=3sinθ-4sin3θは、サンシャイン引いて夜風が 身にしみるという語呂は有名と思います。)インターネットで調べればこの類はたくさん出てくるでしょう。ですが、覚え間違いもあるので、必ず式変形から確認できるようにしておきましょう。積分では、1/3公式や1/6公式などを覚えておくときっと役に立ちます。その際も、必ず正確に覚え、一度は導いておくようにしましょう。軌跡の問題については、全体的に難しいところなので、特に例は挙げませんが、各自見直しておくようにしましょう。

数学3C

数学3については、(数学Cについては、私が受験した頃と内容が変わってしまっているようなのであまり触れませんが、)積分、自然対数についてはしっかり勉強したほうがよいでしょう。積分は、部分積分(logeの積分など)や置換積分(sinやcos、tanの置換)を正しく行えるか、1/cosθの積分を計算できるか、区分求積法を正しく行えるか、というところをもう一度確かめてみてください。また、難関大を受けるのであれば、空間図形の体積を求める公式 V=∫baS(x)dx も普段から使う練習をしておくとよいでしょう。いざやってみると、どの文字をパラメタに設定したらよいか悩むものです。自然対数については、底の変換公式を一度確認しておくとよいでしょう。また、時々(log3)×(log2)=log6という間違いをしてしまう人も見るので、普段の計算から注意しておくことが大切です。(ちなみに、正しくはlog3+log2=log6ですね)


以上、各分野についてまとめてきましたが、難関大を受ける人にとっては、更に、理論と集合(数学1Aの範囲)に関する深い知識・理解が要求されることがしばしばあり、個々の部分が弱点になっていて過去問や模試で点が取れないといった事態が起こってしまいがちです。これに関しては、実際に問題に当ってみて体感してほしいと思います。京都大学2008年度数学理系乙の第4問や、京都大学2012年度理系数学第3問、東京大学2011年度理系数学第4問、東京大学2010年度理系数学第1問などを一度じっくり考え、解答をよく読んで理解しておくとよいでしょう。(解ける必要は全くありません。こういう解き方があるんだな、と知っておくことが一番大切です。)

お勧めの参考書

  • 青チャート
    まずはこれです。先に述べたように、基本例題と重要例題を解くだけでも十分です。赤チャートを使っていたという人も周りにいますが、その人も難易度的には青チャートで十分、と言っています。答えを考えるだけでなく、載っている解法を理解することを大切にしてください。
  • プラチカ
    現役生時代にシニアの家庭教師の先生に紹介してもらいました。問題集自体は薄いですが、1問1問に重要な考え方が詰まっているので、解き終えれば確実に力がつくと思います。思いつかなければあまり時間をかけすぎず、答えを理解しながら書き写すようにすれば効率が良いと思います。
  • 大学への数学
    難関大を受ける人なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
    この問題集は、解答を覚えるという方針ではなく、じっくり考えて答えを出す、という勉強法が適していると思います。青チャートでやった内容を組み合わせて考える練習のための問題集として役立てましょう。また、整数問題や確率など、分野を絞ったものも出ているため、特定の分野を重点的に勉強したいときにも役立ちます。
  • オリジナル
    学校で配布された問題集です。答えが存在しないのが少し難あり、といったところですが、問題数が豊富にあり、計算練習には非常に重宝するでしょう。また、良問も多いため、わからない問題を先生などに尋ねながらこなしていけば、かなり力はつくと思います。

最後に

さて、長々と勉強のポイントのようなものを書いてきましたが、何よりも大切なのは、皆さんが「数学って楽しい」と感じてもらうことだと思います。

数学の試験を解く時に求められているのは、正しい答えを導くことだけではありません。数学の採点は、そこに至る過程をどれだけわかりやすく伝えられているか、というところを重視して行われていることを覚えておいてください。いきなり式を書きだすのではなく、どのように考えてその式を立てたのかを、簡単でいいので、日本語で書いておく習慣を身につけてください。図形問題やグラフ問題では、考え方が伝わるよう、見やすく大きな図を書くよう心掛けてください。これらのことは、数学を好きになり、そして、自分の解法を好きになれれば、自然とできるようになると思います。

数学は、理系に進む人はどの分野に進んでもお世話になるはずですし、文系に進んでも、数学的な発想ができると、自然と理論的な思考ができるようになり、難しい問題に当った時に解決の助けになるようです。(これは、浪人時代の予備校の先生に言われたことです。)決して受験のためだけのものではなく、将来の役に立つ学問なんだ、と考えながら勉強していけば、きっと数学の力もついてくるでしょう。皆さんの勉強がうまくいくよう願っています。

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