評論文の勉強法のヒント
評論文対策についての勉強法が丁寧に述べられています。
国語の点数は伸びないと諦めかけている高校生には必読です。
- 著者
- 札幌市内の中高一貫校(北嶺)出身のK家庭教師(講師)。現在、北海道大学医学部医学科に在籍中。やさしく丁寧な指導に定評があり、多くの教科に対応できる家庭教師です。
シニアの教室で中高一貫校生、高校生を指導。 - 内容
- 評論文対策についての勉強法が丁寧に述べられています。国語の点数は伸びないと諦めかけている高校生には必読です。
はじめに
みなさんこんにちは。北海道大学医学部のKといいます。みなさんは、「評論文の勉強法」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。本を読むことでしょうか、それとも漢字を覚えたり、言葉の意味を覚えたりすることでしょうか。そもそも、評論文の読解の成績は勉強しても上がらないと思ってはいないでしょうか。評論文の勉強法に自信があって、「こう勉強しているから得意」だとか「今は苦手だけどこういう勉強すれば得意になるはずだ」っていうことを言える人ってなかなかにいないのではないかと思います。実際に、評論文の得意な人でもなんとなく得意だとか、昔から本は読んでいるから得意だとかいう人が高校時代の僕の周りでも大半でした。
しかし、そのように思われがちな評論文にもちゃんと勉強法があります。今回は「評論文の勉強法のヒント」という形で、まず何を意識しながら勉強をするのかについて、その後にどういった勉強をしていったらいいのかについて書いていきたいと思います。今から書くことは一大学生の考えでもあり、尊敬する国語の先生から教えていただいたことでもあります。参考にしてくだされば幸いです。
1.正しく読むということ
みなさんのうちの多くは日本で生まれ日本で育ち普段から日本語を話すので、日常会話の中で相手の言っていることがわからなかったりすることはほとんどないのではないでしょうか。では、評論の問題で筆者の言っていることがいまいちわからなかったりしてしまうのはなぜでしょうか。それはおそらく、その文章の中で筆者がテーマとしている主部とそれに対応する述部がつかめていないからではないかと思います。私たちが評論問題として取り組むような文章はある長い本のごく一部分であり、そのなかでテーマとなっている主部は9割9分ただ1つです。そこをまず的確にとらえようとすることが大切です。後々勉強法のところでも述べますが、この主部と述部を選ぶということがすなわち要約となり評論文を勉強する上で一番大切なことになってくるのです。
例えば、日本の文化について少し触れたあと、アメリカの文化について長々と書き、最後にまとめがある、といった構成の文章を読んだとしましょう。この文章の中で筆者がテーマとしているのは「日本の文化とアメリカの文化」ではないことがほとんどです。筆者は日本の文化かアメリカの文化のどちらか一方について話をしたくて、その対比としてもう一方の文化を取り上げているのです。これをわからずに「この文章は何が書いてあったの?」と聞かれると「日本の文化は~である。アメリカの文化は・・・である。」という答え方になってしまいがちです。正しくは「日本の文化は~である。」もしくは「アメリカの文化は・・・である。」が答えなのです。「そんなことどちらでもいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、このどちらに比重があるかがわからないということが「結局筆者が何を言いたいのかがわからない」ということになってしまっているのです。文章中のテーマとなっているただ一つの主部、これを探していくトーニングをすることが大切なのです。
次に述部についてです。文章全体で何を主張したいのかにあたる述部を考えていくうえで陥りやすいミスが、「~ではない。」としてしまうことです。1つの文章を通じて筆者があることの否定だけをして主張をしないということはほとんどありません。仮に、「日本の発展に必要なのは経済成長ではない。」という主張を文章の大半を使って展開する文章があったとしましょう。しかし、その「~ではない。」の部分にいくら文字数が割かれていようと、その裏には「~が必要である。」という主張が必ずあるはずなのです。そこを読み取らなければ、結局筆者が何を主張したいのかを分かったことにはなりません。この述部についてもしっかりと探していくトレーニングが必要であり、先ほど述べた主部と述部をしっかりととらえることができて初めて「正しく読めた」ことになるのです。
2.正しく伝えるということ
正しく伝える、ということは何も情報の正確性についての話だけではありません。評論文を読んでそこから何かを伝えようとする時、大半の人が評論文の中の表現を抜粋して伝えるでしょうからある程度正しく読めてさえいれば間違ったことは言わないはずです。正しく伝えるうえでもっと大事なのは「今何を伝えるのか」なのです。
1つわかりやすい例を挙げます。あなたが母親にテレビの予約を頼むとしましょう。「お母さん、ドラえもん予約しておいて!」これがおそらく1番短い頼み方でしょう。では、これをもっとわかりやすく頼むとしたらどのようにしたらいいでしょうか。「お母さん、今日の19時から8チャンネルでやっているドラえもんをテレビで録画予約しておいて!」おそらくこれがほぼ最大限にわかりやすく必要な情報を含んだ頼み方ではないでしょうか。ここで大切なのは今の状況では「22世紀からきたポケットから不思議な道具をだすドラえもんが出てくる、ドラえもんというアニメ」などといった情報は全く必要ではないということです。
この何が必要な情報で何が不必要な情報であるかというのは、何を聞かれているのかと誰に聞かれているかによって常に変化します。ただし、評論文の問題を答えるうえでは聞かれている相手は同じ文章を読んだ問題作成者でいつも同じであるのであまり気にする必要はありません。大切なのは、「今何を聞かれているか」です。こういわれると当たり前のことを言われているような気しかしないかもしれませんが、センター試験などでの間違いの選択肢の多くは「必要な情報を含まずにいらない情報を多く含む」といった形をとるものなのです。こういった選択肢は文章に書いてあるかどうか、という観点だけで見るとちゃんと書いてあるので一見正しく見えてしまいます。こういった選択肢に引っかからないためにも、「今何を聞かれているのか」を意識しながら必要な情報を選んで正しく伝えるトレーニングが必要なのです。
3.自分の言葉で理解する、ということ
これは先ほどまで述べた1、2の内容とは少し方向性が異なる話ですが、文章中には普段私たちが決して使わないような表現が出てくることがあります。「静謐な空間において」「憐憫の情を覚え」などを日常会話で使う人に僕はあったことがありません。しかし、文章中では当然のように出てくることがあります。これをこのまま、杓子定規に頭の中でも憐憫の情などとしたまま読み進めてしまっては理解が進んでいきません。頭の中では話し言葉に置き換えながら理解していくようにしていくのがよいと思います。少し前、日本国憲法を話し言葉でまとめたものが話題になったことがありましたが、正確な意味やニュアンスまでは理解できていなくてもあのような形で読んだ方が理解しやすいと思います。その話し言葉に変える作業を自分の頭の中行うのです。そうすることできっとスムーズに理解していくことができるのではないでしょうか。ただそのためにはその変換するトレーニングも必要ですし、変換するための語彙力も必要なのです。
勉強法について
では、この1~3の力を身に着けていくための勉強法について最後に書いていきます。僕が一番おすすめする勉強法は、一つの問題集の文章に対して問題を解くのとは別に100字要約を作っていく勉強法です。この100要約を作っていくことが正しく読むことと正しく伝えることの1番のトレーニングになります。要約を作っていくにあたって本文を何度も何度も熟読することも大切です。1つの文章に対して最低10回は丁寧に読むことをしなければきちんとした要約を作ることはできません。ただ、要約を作ってもそれが正しいのかがわからないと勉強がしにくいと思うので駿台のセンター問題集などを見ると大体要約も載っているので、それいがいの問題集でもいいのですが模範解答に要約がついている問題集をお勧めします。また、選択問題を解くうえでも自分の頭の中で聞かれたことに対する答えをきちんと作ってから選択肢を見る癖をつけることも大切です。また、当然のことですがわからない言葉は問題を解き終わった後にでも辞書を引いてみてください。熟語ドリルなんてものをやるよりかははるかに有意義だと思います。
このように、勉強法自体は非常にシンプルですが、大切なのは何を意識して勉強するかなのです。無意味にたくさん問題集を解いても評論文は何も意味がありません。しっかりと今まで書いたことを意識して評論文はやればできるようになるのだと信じて勉強に取り組んでもらえたらと思います。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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