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受験数学で「頭打ち」から抜け出すために必要な考え方と勉強法

受験数学で「頭打ち」から抜け出すために
必要な考え方と勉強法

O講師
O講師
著者
兵庫県出身。公立高校では文系。その後理系に転向し、北海道大学工学部卒業・大学院中退を経て、札幌医科大学医学部に進学。主要5教科では地理以外は全て指導経験があります。高校生に関しては、これまで100名以上の生徒を指導しています。
令和2年7月現在、シニアの教室で多くの高校生を指導中。
内容
数学で飛躍すべき方法論が具体的に述べられています。

はじめに

  • 小学生時代、通常のテストで100点満点中60点を取り、「これはまずい」と感じて勉強した結果、次のテストで50点を記録。
  • 中学2年の夏休み、部活にも追われ、当時好きだった子と遊びに行けなかったが、休み明けテストで連立方程式を一問も解けずに18点を取ったことで、結果的にそれが一番の思い出となってしまった。
  • 高校時代、数学の先生から「おい〇〇~、この問題でαとβのどちらがデカいんや?」と聞かれ、「一般的にαの方がデカい」という、およそ根拠のない答えを発し、呆れられた(二次関数の解の、アレです)。
  • 提出する4STEPが自力で一問も解けず、友人からノートを借りたことしかない。

など、数学で失敗したエピソードには事欠かない筆者が、どうやってセンター数学の模試で満点を連発し、記述数学の偏差値が80近くまで伸び、また個別指導の講師としては、ほとんどの問題が解けるようになったか。その体験談を語ると、読者の費用対効果が薄いように思うので、ここでは、今までの指導経験も踏まえて、大学受験に向けてどう勉強すべきか、その勉強法を紹介したいと思う。

1. 準備・教材

以下に分類されるのが一般的だ。

  • ①教科書(数研出版など。東京書籍、啓林館なども勢力を伸ばしている)
  • ②傍用問題集(4STEP、サクシード、クリアー、ニュースコープ、アドバンス等)
  • ③参考書(チャート、ニューアクション、フォーカス等。分厚いアレです)
  • ④受験用問題集(やさしい理系数学等、学校で使っている方もいるかと思うが、メジアンあたりも、ここに分類される)

①~②に加えて③も学校で配られることが多い。③が配られていない場合は、受験する大学のレベルに合わせて選べばよいが、重要なことは「背伸びしない」ことだ。例えば北海道大学の文系や理工系であれば、僕なら黄チャートを使う。最近は青チャートが多くの学校で配布されているようだ。批判するつもりはないが、難しすぎてわからないと、数学は面白くない!僕が高校生であれば、心が折れていたように思う。あくまで「基本を大切に」

2. 単元別に問題パターンを抑える、しかしながらパターン学習に依存しすぎない

学校で新規に学習する際は、基本事項を抑えて、②などで問題パターンに慣れるという流れでよい。徹底してほしい。
そのうえで、長期休みの間に、公式の意味や証明方法を、今一度①で確認する。おおむね以下のように分類できる。

  • 純粋に覚えて使いこなすべき公式
  • 証明方法をある程度理解しておいたほうがよい公式
  • むしろ理解すべき公式

加法定理などは、覚える公式の代表例だろう。一方で、余弦定理や面積公式、正弦定理と接弦定理などが、同じような証明方法であることは知っておくべきだ。「センター試験の平面図形でsinが与えられて学生が面食らったのでは」という予備校の好評があったが、式の成り立ちが似ているのだから、やっと出たかといったところだ。

理解すべき公式としては、二倍角・半角の公式、和積・積和公式など。一度、加法定理から導いてほしい。メネラウスの定理なども、「三角形と直線」から定義を理解したい。「二次方程式の解と係数の関係」などは、覚えることが勿体ないとすら感じる。

理解する公式を増やすこと、そして公式への理解を深めることは、必ず行うこと。上記の分類は、学校の先生や、塾・家庭教師の講師に聞くのが一番よい。はるか昔に学んだ単元などは、教科書などの目次をみて「何を学んだか」思い出すのも有効だ。そうやって、頭のなかの「道具箱」を増やしていく。数学Ⅱの図形と方程式などは、センター試験で単独出題がないことで軽視されがちだが、文字で割るときの場合分け(なぜゼロで割ってはいけないのか、割るという演算はそもそも何なのか等、調べてみるといい。急がば回れではなく、基本的なことを大切にする)など、解答の際の注意深さを鍛えるという観点からは、むしろ宝の山だ。

この過程と、④や過去問で複数単元にまたがる問題を解くことが、単元別の学習から良い意味で「突き抜ける」ことにつながる。

3. 使ってはいけないと思わないこと、「なんでも使ってみる」こと

例えば、「図形問題」と言われて、ひるむ生徒は多いと思う。僕もそうだった。単独で対策をすべきなのかと。「単元を増やす」意識を持つ必要はない。「図形」と言われているのだから、「図形」をテーマにしている単元であれば何を使ってもいいんだな、という意識で挑めばよい。数学Aの「平面図形」、数学Ⅱの「図形と方程式」、数学Bの「平面・空間ベクトル」、数学Ⅲの「複素数平面」および「式と曲線」などの教科書には、積極的に図が出てきたはずだ。Ⅰの「三角比」も正式名称は「図形と計量」だった。中学校でも「平面・空間図形」、「合同と証明」、「三角形と四角形」、「相似」「三平方の定理」が出てきたはず。

中学校の教科書まで見直すとなると気が引けるかもしれないが、目次くらいみておく価値は十分にある。単元別演習の際も、例えば「平面図形の単元だから、平面図形の単元しか使ってはいけない」と思わず、「図形ならどれの単元のものも使っていいんだな」と思う。

失敗しても良いし、恥ずかしい思いをしても良い。そうやって失敗を積み重ねて、本番で失敗しなければ良い。意外と「してはいけないこと」は少ないし、してはいけないことには根拠があるので、それを理解しておこう。

僕は、等積変形などは中2で学ぶが意外な大技で、積分の面積計算では「奥の手」として意識していた。周りが「ロピタルの定理知っているか」などと話していても気にしない。それは教科書には載っていない。医科大学の入試本番の図形問題で、相似条件まで記載したのは僕くらいかもしれない。それくらい必死に、真面目に、「背伸びをしない、基本を大切に」する。

4. 参考書と過去問、入試問題集の使い方

単元別の学習を終えたら、参考書に入る(参考書は、長期休みの課題になっている学校もあると思うが)。

基本は、例題だけでよい。青チャートの発展関連問題などの難しいものは、いったん飛ばすこと。

手順は

  • 解答を隠して例題をみる→方針が浮かぶ→解答をみて、正解しているものは、〇印をつけて、解かない。
  • 方針が浮かぶが解答をみて不安になったものや方針が間違っていたもの、解答をみて理解できたものは、△印をつけて、解答を再度隠して、時間内に解答を「自力で再現」する。
  • 解答をみても理解できないものは×印を付けて解かず、後日学校の先生や塾・家庭教師の講師に聞く。

この流れで、ザっと参考書を進めてほしい。
目的は基本事項の復習を短期間で行うことであり、今後の目標は△印や×印を減らしていくことにあるが、〇印をつける基準を厳しく設定すること。また、解法暗記を重視すると×印は減るが、理解が浅くなってしまい、成績が「頭打ち」することにつながりかねない。「わかったつもり」だが出来ないことになる。上手くいっても偏差値60くらいで止まるし、数学での暗記が多くなり他科目の成績の伸びも鈍化する。

どの単元から進めるかについては、大学の過去問の頻出単元に合わせたほうが効率がよいし、モチベーションも上がる。数学Ⅰの「数と式」から始めると、「これは入試に出るのか?」と疑問に思う単元が続き、そこで心が折れる可能性がある(僕がそうだった)。確かに、実数の概念や絶対値は非常に重要だが、それは数学ⅡやⅢを復習する際に実感するものであり、その後で数学Ⅰに戻ってしっかりと理解する。

参考書を終えたら過去問をやる。

目的は、どの単元の問題が融合しているか知ることと、その大学独自の「くせ」を知ることになる。例えば、北海道大学では「通過領域」を求めさせる問題が多かったり、札幌医科大学の確率の問題は、思考パターンとして、ほぼ同じ流れだったりする。過去問はどれくらいやるべきかという議論はよくあるが、こういった「くせ」が理解できるまでやり込むべきだ。「またこういう問題か、好きだねぇ」と思えれば、かなり実力がついている。この時点で、解けたか解けなかったかで一喜一憂する必要はなく、弱点が見つかれば③参考書や、後述する④入試問題集で似たような問題を見つけ、演習する。

④入試問題集は、過去問の頻出テーマの類似問題を特に「重点的に」解いていくことになる。そのような問題「だけ」を行うのも不安である一方、すべての単元に等しく情熱をかけると身が持たないし、大学に合格するために勉強するという当初の目的がぼやける。このころに模試の成績が伸び悩む一つの理由だ。いわゆる「オーバーワーク」の一種であろう。目標点を確実に確保するために、戦略的に勉強することだ。

浪人生は特に、模試は受けるべきだ。

制限時間がある中で、解っていることを解答欄に記載することは、思ったよりも難しい。僕は再受験した際の最初の模試で「解けるはずなのに得点できない」ことを痛感した。解説を読んだら「解けたな」と思った問題ばかりだったが、偏差値は50台だった。僕は元文系であり暗記は得意であったが、理解が足りないと成績が頭打ちすることも味わった。この記事を書いたのは、同じ失敗をしてほしくないからだ。

「なぜその解法になるのか」、「他に解法はないか」、「なぜこの解法はしてはいけないのか」など徹底的に考えること。「解説をみてわかった」の、一歩先へ行くこと。勇気を持って、勉強方法を変えることだ。
パターン学習は大事である一方、パターン学習に依存しないことについては、T講師の記事『数学で高得点を取るために(二次試験対策)』も参考にしてほしい。共通テストの数学で求められる勉強に関しては、僕の他の記事『センター生物からみた過去問の重要性と共通テスト対策』に書くこととする。

※お薦めする教材

①教科書、②傍用問題集

学校で配られたものでよい。敢えて進学校で使われているものを買いなおす必要もない。教科書ガイドは、教科書の問題の答えを知りたい場合に重宝するが、教科書ガイドは教科書よりも公式や考え方の説明が少なく、理解が浅くなるため、教科書ガイドのみで勉強することは全くお薦めしない。

③参考書

チャート式(数研出版)、もしくはフォーカスゴールド(啓林館)がよい。チャート式は使っている人が多く、例題の質もよい。無難だと思う。どのチャート式を使うかについては、白チャート、黄チャート、青チャートから、受験する大学のレベルに合わせて選ぶ。道内私立であれば白チャート、道内や道外の地方国公立の文系・理工系であれば黄チャート、道外の難関大学の文系・理工系や単科医科大学、総合大学の医学部および獣医学部であれば青チャートが目安だ。学校で配られている場合、受験する大学とのレベル差が大きくなければ、買い直す必要はない。

フォーカスゴールドは、青チャートの代わりになるが、解説が突出してよい。講師として説明が必要だと思う内容について、ほとんど記載がある参考書を、これまで見たことがない。素晴らしい。

④入試問題集

受験する大学によって、買うかどかも含めて検討が必要。医科大学などの難関大学は「やさしい理系数学(数研出版)」がよいだろう。「重要問題集(数研出版)」はやる気がそがれる作りであり、「ハイレベル数学理系(数研出版)」などは、やり過ぎだ。そもそも、北海道大学を含む地方国公立の文系や理工系であれば、ここまでやる必要はないのではと感じる。

あくまで「③までをしっかりやり、過去問で練習したうえで、必要な単元に関しては使うこともあるかもしれない」という立ち位置だ。どういった問題を選べばいいかという疑問には、学校の先生や塾・家庭教師の先生が応えてくれるだろう。北海道大学については「北海道大学の数学25か年」といった問題集も存在するので、そちらで練習したほうが効果がよい。背伸びしないことが重要。「チョイス数学ⅠAⅡB(河合出版)」も同様で、単元によっては使う意味があるかもしれない。

以上、数学で、「頭打ち」から抜け出すために、信じて取り組んでほしい。

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