物理学習に対する心構え
物理は伸ばしやすい科目です
- 北大医学部 講師M君
- 著者
- 北海道大学医学部医学科の1年生のM家庭教師(札幌北高出身)。理数系指導に定評があり、現在、シニアの家庭教師として、北嶺中、日大中、附属生の指導を担当しています。丁寧に、わかりやすく指導してくれる家庭教師です。
- 内容
- 物理はどのように勉強していけば良いのか、何を意識して取り組めば良いのかが、問題集の取り組み方なども含めて、わかりやすく書かれています。物理を苦手にしている生徒、あるいは、苦手にはしていないが伸び悩んでいる生徒には、とても参考になると思います。
はじめに
初めまして、北海道大学医学部医学科のMです。受験生の時は理系科目が得意でした。特に物理は好きな科目で、医学部志望でしたが大学でも詳しく学んでみたかったので、総合大学である北海道大学の受験を決めたほどです。受験時の物理の成績は、センター試験は満点で、二次試験は63/75で安定して得点源とすることができました。
私が物理の学習を行うにあたって特に意識したことを挙げていきたいと思います。
私は物理という教科は多くの物理量が文字で定義されていて、文字変形が解答を導く上で必要な教科といえると思います。文字や記号が嫌いな人たちは「難しそう」と思ってしまい、敬遠しがちで苦手に感じる人も多いと思います。
ですが、冷静に考えてみると小数の計算や有効数字の計算などをすることなく解答が可能であるので、しっかり練習すれば計算ミスがすくなくなり、得点しやすく、成果が出やすい科目であると思います。
また、化学や生物と比べると問題のベースとなる典型例と呼ばれるものが少なく、一冊の問題集でほぼすべてのパターンをカバーできてしまうので、得意にしてしまうと省エネで済むお得な教科です!
物理が苦手な人にも、苦手ではないけれど少し伸び悩んでいる人にも役立つ情報をピックアップしました。
1.文字、法則の定義を大事にしよう
先に述べたように物理には多くの文字が登場します。V、ω、k、B……など単元が進むごとに増えていきますよね。
ここで個人的に物理の学習において最も重要だと思うのが、こういった頻繁に文字で表されることが多い物理量の意味をしっかり押さえることであると思います。物理の学習をする際、公式を利用することに意識が移ってしまい、そもそもの文字の意味をないがしろにしがちです。
例えば“速度”とは何なのか、“角速度”とは何なのか、“ばね定数”とは何なのかなど、定義を確認しておくと公式の成り立ちや運動のイメージが一層しやすいものとなります。皆さんが利用している教科書には必ず物理量の定義がしっかりと厳密に書かれていると思います。ここに成績アップへのヒントが詰まっているのです。
また、少し余裕のある人は“法則”の説明についても読んでみましょう。
例えば“フックの法則”、“熱力学第一法則”、など、これらの物理法則から公式が生まれるというプロセスなので、法則の理解は公式の詳しい理解に繋がり学習効果が非常に高いと思います。ぜひ、物理を苦手に感じている人は教科書の“文字の定義”と“法則”の説明をじっくりと読んでみてください!必ず重要なヒントが得られるはずです!
2.公式は意味と導出方法を理解してから暗記しておく
物理の問題の多くは公式を使い解答するので、公式を覚える必要があります。ただし、丸暗記するだけでは実際に問題に当たった時どの公式を利用していいのか分からなくなってしまうので、教科書に書かれている導出方法をしっかりと読んでおきましょう。
物理に限らず、公式や定理の導出方法、証明には学習にあたって役に立つエッセンスが多く含まれているので大事にしましょう。
また、「公式は覚えてなくても導き出せるから覚えなくてもよい」という意見もありますが、私はあまり賛成できません。
テストには時間制限が設けられているので解く速さが重要です。日常学習でもいちいち公式を導くことから始めてしまうと大変効率が悪くなってしまいます。なので、公式の導出を読み込んで理解し、納得してから暗記して利用できるようにすることをお勧めします。
3.作図を丁寧に行おう
物理は図が命です。図を描けば式が自然と立つ問題が多いのです。なので、日ごろから必要な情報を素早く作図する訓練をしておきましょう。
例えば力学の問題であれば注目する物体と働く力を書き込み、力の分解等を素早く丁寧に描けるようにしましょう。この際、問題で与えられた図に直接書き込むのはお勧めしません。図が小さく、間違って消すなどのことを繰り返していくと雑になってしまい、ミスが増えてしまいます。必要な情報の図を大きく丁寧に素早く描く練習が不可欠です。物理の問題を解くにあたって図は生命線となるので繊細なものなのです。
4.おすすめの参考書・問題集
私が利用していた参考書でおすすめなのは「物理のエッセンス(河合出版)」です。先に書いたように物理量の定義や法則、公式の導出が詳しく書かれています。また、典型問題へのアプローチも載っていて簡単な練習問題もついていて実力が付くと思います。
問題集は「重要問題集(数研出版)」か「名門の森(河合出版)」がおすすめです。どちらも典型問題が網羅されているので、どちらか一冊でいいと思います。
問題集を解く際は時間を計るようにしましょう。中には常套手段が必要とされるものも含まれているので、何分以上考えてみてもわからなければ解答を読むといった自分ルールを設定して取り組むのをお勧めします。
間違った問題は印をつけて複数回解くようにしましょう。最低上記に類する問題集は2週するのがお勧めです。
以上が、私が利用していた中でのおすすめです。参考書・問題集は数えきれないほど種類があるので、自分に合うものを店頭で実際に見てから購入するのが良いと思います。
また、市販の参考書・問題集に頼り切って、学校で購入した教科書をないがしろにしないように注意しましょう。入試問題は教授が教科書を見て出題範囲・問題を決めています。教科書を中心とした学習を心がけましょう。
5.座標軸を意識する
皆さんが学ぶ物理はニュートン力学をもとにした物理です。ニュートン力学の目標は時間追跡というもので、現在の状況を観察し未来(t秒後)の状況を推測するのが到達点です。その際、座標軸が必要となっていきます。t秒後に物体は(x,y)にいるといったように表現するのが便利で合理的です。
要するに何が言いたいかというと、物理の問題には必ず座標軸が設定されていたり、正の向きが問題文で指定されていたりするのです。物理の問題は大きさと向きを兼ね備えたベクトルを扱うものが多いです。正の向きを意識しなければ混乱したり、簡単な問いにも戸惑ってしまったりすることがあります。
例えば、運動方程式は“加速度”はベクトルであるので正の向きに向いている力の成分を+に、逆向きの成分を-にして立てます。等加速度運動の問題も座標軸を見てから“加速度”の正負を決める必要があります。回路の問題でも電流の正の向きが必ず指定されていることかと思います。
このように物理において座標軸、正の向きは非常に大切です。意識して問題を見てみてください。
6.最後に
以上、簡単ですが私が物理の学習をするにあたって意識したことを書かせていただきました。
一番覚えてほしい点は教科書の内容を大事にすることです。物理は問題をたくさん解くだけでは苦手が克服されにくい教科です。基礎力が大切なのです。“基礎”というのは“簡単”とは違います。教科書を読み込み自分が納得するまで定義を考えるというのは決して簡単な作業ではないですが、こういった基礎を固める作業が成績アップには効果的で近道なのです。
そして、物理は省エネで済む教科です。物理は典型問題が少なく、計算ミスが出にくいので、克服すれば数学、英語、生物などと比べて勉強量に対する点数の伸びが出やすい教科です。
ぜひ、敬遠せずに物理の学習に取り組んでみてください。
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